釘師

「おはよう」


彼は 額の汗を 右手で拭いながら 更衣室に 入って来た。


「ういっす!だけど毎日こう暑くっちゃ 嫌になるな!」


中には すでに同僚の一人が、着替えてる最中だった。


「今日も 行く?」

同僚は 手にグラスを持って 口に近づける仕草を しながら言った。


「ここんとこ連チャンが、続いてるから 今日はヤメとくよ!」


彼の仕事は 夜勤で、ここ数日は 仕事を 終わえると


毎日の様に 行き付けの飲み屋に通っていた。


実は 彼は このお店で働く前は


このお店の パチンココーナーに 入り浸っていた。


そして、友人数名とつるんで、


毎日の様に 小遣いを稼いでいた。


だが、ある時期から あまり稼げなくなり

バイトでもしようかと 考えていた。


そんな ある日、いつもの如く、


行き付けの飲み屋で、友人と飲んでいた時


常連のおやじが、入って来た。


「おうっ!今日は儲けたか?」


おやじは ママからおしぼりを受けとると

ニコニコしながら 彼らの二席離れたカウンター席に座った。
(男)
「全然駄目だよ!川又さん もうちょっと開けてくれよ!」

(おやじ)
「どうして? 開いてる台もあるだろ?」

(男)
「他にも 俺らみたいな輩が、大勢いやがるから競争率が、激しいんよ!」


(おやじ)     「お前らプロなんだから それを押さえるのが、仕事だろ?」

(男)
「それでも、数が少なすぎるぜ!」

(おやじ)
「社長から 当分は釘を締めろって 言われてるから 仕方ないんだよ!」


おやじは 終始ニヤニヤしながら言った。

このおやじとは たまたま この飲み屋で、知り合って


仲良くなったのだが、


実はこのおやじは 彼らが、たむろして


小遣い稼ぎを している遊技場の 釘師なのである。


彼は もうパチンコやアレンジボールでは 稼げないんで


アルバイトを考えてる事を おやじに伝え

冗談半分で、お店で 働かせてくれと言ってみた。


すると おやじは


「分かった! 支配人には俺が、話をしとくから 明日からでもやるといいさ!」と言った。


遊技場の客であり、しかも 毎日の様に

ダチとつるんで 小遣い稼ぎを している彼が、


そのお店で、働くというのは


普通では、到底あり得ない話であるが、

面接もなしで、翌日から



そのお店で、働く事に なったのだった。












2012年03月07日 Posted byバーバー at 23:28 │Comments(0)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。